悲鳴、怒鳴り、安堵。

少年を村長に預けて一時間が経とうとしていた。

穀は策の修正を再開していた。

(こんなものか。)

入り口付近の策は穀の手により元通りになった。

彼は不器用なので、所々出っ張りがあったり、隣の策と揃わず、ガタガタになっていたが、あまり気にしなかった。

そして工具をしまい、箱を閉めた音と同時に村長の家から激しい悲鳴が聞こえた。

(…!?)

箱に鍵をかけ、急いで向かった。

扉を開けるとその叫び声は一斉に大きくなる。

目をやると、悲鳴をあげている先ほど預けた少年。それを必死で押さえ込み怒鳴っているモミミール。

「怖い…!!やだ……!!やめ……!!」

「ちょっ……落ち着い、てっ……てば!」

トリガー村は穏やかな村だった筈だが。

穀には慣れない状況だった。
工具箱をガタン、と床に置いた音でモミミールが穀の存在に気づいた。

「穀さん!こ、この子、目を冷ましたかと思ったら急に暴、れ嘆いちゃっ…て…!」

「やだ…やだ……!ぅ、あ…!!怖…!!」

取り敢えず、冷静に判断し、行動する。

「まず、押さえ込むのをやめてやれ。」

そう言ってモミミールの腕をつかみ、そっと少年から離してやる。

解かれた瞬間少年はへっぴり腰になりながら、部屋の端へと避難していった。

「安静にしておかないと、体力が回復しないんだよ。」

「さっきのあんたは安静にさせるどころか怖がらせていたぞ?」

次に端っこの少年へ目をやると、ガタガタと震えながら何やら名前と思われる言葉を呪文のように唱えていた。

(恐怖感を解かなければ。)

ゆっくり近づいて少年の目線合わししゃがみこんで覗きこんでみた。

少年は「ひっ」と悲鳴をあげるとビクッと体を跳ねさせた。

「心配するな。ここはあんたを実験台にする気はない。俺が気を失ったあんたをここに連れてきただけだ。

少年はまだ怯えながらも顔を上げた。

「怖がらせてすまなかったな。あっちのピンクの髪のやつはこの村の医者だ。悪い奴じゃない。」

ピンクの髪、と言われたモミミールは苦笑いしながら申し訳なさそうに少年に手をふって見せた。

少年は辺りをキョロキョロ見渡すと、穀へと目線をやった。

ついさっきよりは落ち着いたと見える。

最後に穀は安心させようとし、少年の頭をそっと撫でた。

少年はその行為にもビクッと反応したが、それは一瞬のことで、直ぐ目に光を戻しはじめた。

落ち着ちついたことを確認すると、穀は村の人々にこの状況を知らせるために静かに出ていった。


「ごめんね?僕、こんなこと初めてだから焦っちゃったみたいだ。さ、ベッドに戻って。安静にしててね?」

モミミールもニコニコして安心させようとした。

そしていつものトリガー村に戻った。

変わったのは、一人。少年がこの村にしばらく居ることになったこと。



まぁ、直ぐにここを出ていくだろうが。


穀はそう思った。






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